野良博士

この春、博士の学位を取得できた。しかしながら学振は不採用、ポスドクの公募も次々に敗れ、また、東北の震災の影響で応募していた採用枠そのものが消えるなどして(そう聞いている)、ついに野良博士となってしまった。
他大学には、就職できなかった学位取得者に対して大学が1年間だけ雇用する制度があると聞いたが、"僕が所属する研究室のある大学"にそのような制度はない。僕は客員研究員という、無報酬の立場で研究を続けることを選択した。
この立場の博士を何名か知っている。彼らは塾講師などのアルバイトで生計を立て、奨学金制度を利用して予算をまかない研究を続けているらしい。新年度、4月を目前に、僕もまたそのような選択を覚悟したところであったのだ。

3月末に開催された某学会での発表は反響があった。「面白いじゃないか」と声をかけて下さる先生もいた。その日の懇親会では、この情けない無職っぷりを、恥を捨ててアピールしまくった成果もあって(?)、不確定ながらも雇用に関する一つの約束を頂いたほか、後日、人づてに僕のこの情けない無職っぷりが伝わり、もう一つ雇用のお話を頂いた。
それは予算の都合上、パートタイムでしか雇えない研究補助の仕事だった。しかしながら業務で収集したデータは可能であればファーストで論文にまとめていいらしく(コレスポンディング・オーサーとしては書いてもらって業績になるのだから嬉しいだろう)、空いた時間に僕自身の研究を継続してくれてもかまわないとのことだった。今のところ執筆中の論文を含めて3つ分のネタを溜めているため、給料が安い点を除けば、非常にありがたい条件である。さらに、来年度はポスドクとして扱えるかもしれないとのことだった。

現在は、貯金を潰しつつ学会の編集委員のお仕事をいただいて生活している。所属研究室の予算と施設を借りて研究している。
僕はあと1ヶ月と期限を決めて、民間を含めたほかの公募を探すことにした。ダメだったら研究補助員の仕事を頑張ろうと思う。この点はその雇用主の理解を得ており、待ってくださっている。ほんとうにありがたい。

諦めないことは方法の一つだと思う。能力を見誤っている可能性もあるのだ。が、しかし、もう少しだけ頑張りたい。

いくつか書き留めておきたいネタがあったけれど、それはまた別に書き残すことにしたい。